Huawei対ZTE事件CJEU判決後の判例法
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Sisvel v Wiko

2019年09月4日 - 事件番号: 7 O 115/16

http://caselaw.4ipcouncil.com/jp/german-court-decisions/lg-mannheim/sisvel-v-wiko

A. 内容

原告Sisvelは、公平、合理的かつ非差別的(FRAND)な条件にて規格実施者に利用を認めるとの約束に基づき、UMTS及びLTE無線通信の規格に必須である(と見込まれる)と宣言された特許を保有している(標準必須特許又はSEP)。Sisvelは、自らのSEPを含め、複数のSEP保有者の特許で構成されるパテントプールを管理している(パテントプール)。

被告は、Wikoグループのフランスに所在する親会社及びドイツに所在する子会社(Wiko)である。Wikoは、LTE規格を実施する携帯電話を特にドイツにおいて販売している。

2015年6月、Sisvelは、パテントプールの存在及びライセンス取得が必要である旨をWikoに通知した。両当事者は、ライセンス契約の協議に入った。Sisvelは、パテントプールに含まれるSEPの情報について、その複数の特許の規格必須性を示したクレームチャートを添えてWikoに提出した。2016年6月1日、Sisvelは、当該パテントプールを対象とするライセンスについてWikoに申出を行ったが、合意には至らなかった。

2016年6月22日、Sisvelは、1つの特許がLTE規格に抵触していることに基づき、Wikoを相手方として、ドイツのマンハイム地方裁判所(本裁判所)に訴訟を提起した(権利侵害訴訟)。Sisvelは、実体的事項に関するWikoの損害賠償責任を確認する宣言的判決とともに、情報及び計算書の提出を求めた。 2016年6月23日、Sisvelは、Wikoのドイツ子会社に対して自己のSEPのみを対象とする双務的ライセンスをオファーしたが、このオファーは、承諾されなかった。さらにWikoは、SEPの無効確認を訴えて、ドイツ連邦特許裁判所に訴訟を提起した(無効確認訴訟)。

2016年10月4日、Sisvelは、侵害訴訟での訴えを変更し、差止命令による救済手段、並びに侵害性を有する製品の市場からの排除及びその後の破棄を追加的に求めた。

2016年11月11日、WikoはSisvelにカウンターオファーを申し出た。その後、Wikoは、当該カウンターオファーに従い、保証金及び情報をSisvelに提供した。

訴訟手続中に、Sisvelは、プールライセンスに関し、ロイヤルティ料率を含めた新たな申出をWikoに行った。Wikoはこれについても拒絶した。2017年12月22日、Sisvelは、並行して行われていた特許の無効確認訴訟においてドイツ連邦特許裁判所によるSEPの有効性にかかわる判断が下るまで、権利侵害訴訟手続の停止を命じるよう本裁判所に申し立てた。Wikoは、Sisvelの申立てに同意した。2018年1月30日、権利侵害訴訟手続の停止が本裁判所により命じられた。

2018年6月26日、権利侵害訴訟手続の停止中に、Sisvelは、自らが策定した、新たな内容のライセンスプログラムに基づき、あらためてWikoにライセンスオファーを申し出た(2018年オファー)。

2018年オファーと同時に、Sisvelは、―とりわけー選定した20件の特許に関するクレームチャート及び新規ライセンスプログラムと既存の2つのプログラム双方の既存のライセンシーのリストをWikoに提供した。当該リストには、各契約の締結日と合意されたライセンス料が記載されていた。しかし、ライセンシーの名は黒塗りされていた。

Wikoは3か月超にわたり2018年オファーに対応しなかった。2018年10月15日、WikoはSisvelに回答したが、2018年オファーの内容に対しては意見を述べず、2016年11月11日付のカウンターオファーを引用するにとどまった。さらにWikoは、Sisvelが2018年オファーの際に提出したリストの中で既存のライセンシーの名を開示しなかったことを批判した。

この主張に応じ、Sisvelは、2018年10月22日、Wikoに秘密保持契約(NDA)の草案を送付した。Sisvelは、WikoがNDAに署名する時点で既存のライセンシーの名を開示するつもりであった。しかしながら、Wikoは、Sisvelから提案されたNDAに署名することを拒否した。

2018年10月、ドイツ連邦特許裁判所は、係争中のSEPを部分的に認めた。爾後、本裁判所は、権利侵害訴訟手続に取り掛かり、特にFRAND関連問題について協議した。

2019年7月の口頭審理終了後、WikoはSisvelに新たなカウンターオファーを申し出、追加情報をSisvelに提供した。しかしWikoは、2016年11月11日付の初回のカウンターオファー後には、保証金額を増額しなかった。

本判決において [1] 、本裁判所は、Wikoに差止命令を下すと共に、侵害性を有する製品を市場から排除し、滅失させるよう命じた。さらに本裁判所は、実体的事項に関するWikoの損害賠償責任を確認し、損害額の算定に必要な情報をSisvelに提供するようWikoに命じた。


B. 判決理由

本裁判所は、Wikoの製品が係争中の特許を侵害していると認めた [2] 。係争中の特許の必須性は、両当事者間で争われなかった [3]

さらに本裁判所は、EU機能条約(TFEU)第102条により、Sisvelが差止命令による救済手段及び権利侵害訴訟において侵害性を有するとされる製品のリコール及び破棄を求める請求権の行使を妨げられるものではないと判示した。Wikoは現訴訟の申立てにより、SisvelがTFEU第102条に反して市場での支配的な地位を濫用していたと異議を申し立てた。

本裁判所の見解によれば、SisvelはHuawei対ZTE事件 [4] においてEU司法裁判所(CJEU)が定めた行動義務(Huaweiフレームワーク又は義務)を履行していたため、本件は支配的な地位の濫用にあたらない。これに対しWikoは、Huaweiフレームワークを遵守していなかった。

Huaweiフレームワーク

これまでの判例法から外れて、本裁判所は、権利侵害訴訟手続の過程で両当事者がHuawei義務を是正することが可能であるとの見解を示した [5] 。しかしながら、これには、CJEUにより要請される通り、両当事者間で圧力のない協議ができるようになることが必要である。このため、両当事者は、並行する無効確認訴訟において連邦特許裁判所の決定がなされるまで、審理停止の申立て [6] 又は同意を得た上での手続停止等の利用可能な手続文書を使用して、訴訟手続の一時停止を求めなければならない [7]

上記を背景に、本裁判所は、権利侵害訴訟手続開始後Huaweiフレームワークに基づき情報開示義務の是正を求めるSEP保有者に対し、審理停止を申し立てるよう求めた [7] 。当該申立てがなされた場合には、「誠実意思を有する実施者は訴訟手続停止に同意するであろう」と本裁判所は期待している [7]

本裁判所は、係争中の権利侵害訴訟手続の過程でHuawei義務の欠点を是正する機会を両当事者に与えることは、英国控訴院(Unwired Planet対Huawei) [8] とハーグ控訴裁判所(Philips対Asus) [9] の双方で採用された「セーフハーバー」方式に準じていると述べた。上記裁判所はいずれも、Huaweiフレームワークについて厳密に実施すべき強制的な正式手続とみなしておらず、したがって、CJEUにより定められた協議の枠組みから逸脱したとしても、必ずしも、特許保有者による差止命令の請求を排除する濫用的な行動にはあたらない [10] 。さらに、これに該当するかどうかは、ケースバイケースで評価する必要がある [11]

権利侵害通知

その上で本裁判所は、Sisvelが係争中のSEPの侵害について権利侵害訴訟手続開始前にWikoに通知するHuawei義務を履行していたと認めた。

SEP保有者の各通知の内容に関し、本裁判所は基本的に、従前の決定と同じ要件を適用した。本裁判所は、当該通知において (1) 係争中の特許についてその特許番号を含めて記載し、(2) 当該特許が規格に必須として関連標準化機関に宣言されていることを通知し、(3) どの規格について当該特許が必須であるのかを示し、かつ、(4) 実施者の製品又はサービスのうち当該規格を実施する技術的機能を説明しなければならないと認めた [12] 。適切とする詳細の水準については、ケースバイケースで判断する [12] 。本裁判所は、原則として、特許保有者が、SEPライセンス許諾の交渉において慣習的に用いられるクレームチャートを実施者に提供することにより、その通知義務を履行したことになる旨を確認した [12] 。本裁判所はさらに、企業グループの親会社に通知が送付された場合、通常、Huaweiフレームワークにおいて十分であることを再確認した [12]

SEP保有者の申出

本裁判所は、SisvelがまたWikoに対して書面による明確なFRAND条件でのライセンスの申出を行うHuawei義務を履行していたことも認めた。各評価に関し、本裁判所は、権利侵害訴訟手続停止中にSisvelからWikoに対してなされた最後の申出である2018年オファーのみを検討した [13]

まず、本裁判所は、どの具体的なライセンス料や追加的な契約条件がFRANDの「客観的側面に該当する」のかについて、侵害を管轄する裁判所がこれを判断する義務を負うものではないとする自らの立場を重ねて強調した [14] 。カールスルーエ高等地方裁判所(superior Higher District Court of Karlsruhe)が以前に示した見解に反し、本裁判所は、CJEUが差止命令及び製品リコールに関する訴訟手続についてFRAND条件の「正確な数量的判断(precise mathematical determination)」を「負わせる」つもりはなかったとの考えを支持した [15] 。さらに、FRANDへの該当が見込まれる条件には「幅」があるため、差止命令の要求がTFEU第102条に抵触するのは、特段の交渉状況及び市況に鑑みて、SEP保有者の申出が「搾取的な濫用」にあたるような場合に限られる [14] 。すなわち、本裁判所の認識は、英国控訴院のUnwired Planet対Huaweiと共通であった [8]

上記にかかわらず、本裁判所は、権利侵害を管轄する裁判所がSEP保有者のライセンスの申出がFRANDに適合するか否かにつき、単なる「表面的」な評価ではなく、それ以上の評価を行うべきであることを明確にした。権利侵害を管轄する裁判所は、具体的な申出の全体的な内容について、両当事者の交渉上の立場における典型的な当初の違いにかかわらず、誠実に行為する実施者に対し当該申出に応じることを要求するものであるか否かを検討しなければならない [16] 。原則として、このような義務は、SEP保有者が自らの申出がFRAND条件での申出であると判断する理由を立証する方法でロイヤルティの算定を説明する場合に生じる [17] 。プールライセンシングプログラム又は標準ライセンシングプログラムが存在する場合は、通常、各プログラムが市場で受け入れられていることを立証すれば十分である。プールごとに十分な数のライセンスが許諾されている場合、特許保有者は、当該プールに包含される特許に言及した適切な数量のクレームチャートを提示して、当該プールの構成を概説すれば良い [18]

この状況において、本裁判所は、特許保有者の申出がFRANDに適合するか否かに関し実施者が申立てをする場合、原則として、個別の契約条項の違法性(の主張)を根拠として申立を行うことができない旨を指摘した。さらに、申出がFRANDに適合しているか否かについては、包括的な契約の概要に基づき評価しなければならない [19] 。例外が適用されるのは、特定の条項が「容認できない効果(unacceptable effect)」を有する場合に限られる [19] 。本件において、本裁判所は、2018年オファーのいずれの条項にもこのような効果がないと判断した [19] 。 とりわけ、本裁判所は、ライセンシー(ここではWiko)に申し出がなされたライセンスの対象たる特許の消尽に関する立証責任を定めた条項が許容されると判断した [20] 。同様の事件におけるデュッセルドルフ地方裁判所の見解とは対照的に、本裁判所は、ライセンシーがサプライヤーを関与させることによりライセンス網を追跡しやすい立場にあることから、関連の事実を確証するようライセンシーに要請することが適切であると論じた [20]

また、本裁判所は、提示されたライセンスの期間を5年に制限する条項が反トラストの観点から「容認できない効果(unacceptable effect)」を有するとは判断しなかった。本裁判所は、その5年の期間について、急速な技術の発展を特徴とする無線通信業界において実勢的な慣行に準じたものであると判示した [21]

さらに本裁判所は、ライセンシーによる報告義務の違反や30日を超える支払遅延が生じた場合のライセンス契約の例外的な終了を求める権利を定めた条項について、上記の「容認できない効果(unacceptable effect)」がないことを指摘した [21]

本裁判所は、2018年オファーにおいて、契約期間中、対象特許の数に変更が生じた場合に合意済みロイヤルティ料率の調整について定めた条項が含まれていなかったことに異議を唱えなかった。本裁判所の見解によれば、FRAND条件でのライセンスに当該条項を含めることは求められていない [21] 。しかしながら、プールを構成する特許の多数がライセンス期間締結後間もなく満了する場合には、例外が認められるべきである [21] 。一般的に、ライセンスの申出において、契約目的の履行不能性を理由にライセンスの調整を要請する両当事者の制定法上の権利(ドイツ民事法典第313条1項)が制限又は排除されていない場合には特に、「調整」条項がなくとも問題にならない [21]

非差別性/秘密保持

FRANDライセンスの申出の非差別的要素に関して、本裁判所は、TFEU第102条においては、係争中の権利侵害訴訟手続において、被告に対する申出が同様の状況に置かれた競業者に比べて被告を差別するものでないことを証明する特許保有者の義務(二次的な)が定められているとの見解を示した [18]

上記にかかわらず、本裁判所は、いかなる事例においても上記の義務が法的に「全面的な透明性」を伴うわけではないことを明確にした [18] 。SEP保有者の反トラスト義務により、法的保護に値する被告の秘密保持上の権利が常に重視されるものではない。さらに言えば、個々の事例の特別な状況により、秘密性を保護しなければならない可能性がある [18]

本裁判所は、SEP保有者と同様の状況に置かれた第三者たるライセンシーとの間の既存のライセンス契約(類似契約)に定められた情報を特段に参照した上で、当該契約を開示する特許保有者の義務については、侵害を管轄する裁判所により、訴訟手続における両当事者の訴答を考慮した上で、ケースバイケースで判断されるべきであるとの見解を示した [18]

本裁判所によれば、特許保有者は、保護されるべき秘密保持上の権利の存在を確立しなければならない。類似契約に秘密保持条項が適用されるというだけでは、本来的には、特許保有者の開示義務の範囲を制限する根拠とはならない [22] 。これに対し被告は、特許保有者のライセンスの申出がFRANDに該当するか否かを評価するに際し、要請した情報が必要であった理由を説明しなければならない [22] 。被告は、SEP保有者の差別的と見られる行動を示し、具体的な事実を確証しなければならない [23]

この点を考慮し、本裁判所は、いかなる場合においてもSEP保有者が権利侵害訴訟手続において既存の類似契約書すべてを提出する義務を負うとのデュッセルドルフ裁判所の見解に異議を申し立てた [24] 。とりわけ、特許保有者が実施者との間で標準的なライセンス契約のみを締結している場合、当該契約の条件が公開されているのであれば、本裁判所には、訴訟手続において(膨大な)同一の契約書を提出する義務を特許保有者に負わせる理由がない。すなわち、それまでに締結した(標準的な)ライセンス契約の件数を開示すれば十分である [24]

したがって、本裁判所は、2018年オファーに際しSisvelからWikoに提出された既存ライセンシーのリストについて、ライセンシーの名が黒塗りされていたとしても、当該オファーのFRAND該否の確証に十分であったと認めた。本裁判所の見解において、Wikoは、2018年オファーのFRAND該否を評価するために既存ライセンシーの身元情報が必要であった理由を説明していなかった [25] 。さらに本裁判所は、Wikoが既存ライセンシーの身元開示を目的として訴訟手続が停止されている間、Sisvelから提示されたNDAの締結を拒絶していた事実も考慮した [26] 。2018年オファーのFRAND該否に異議がなかったため、本裁判所は、WikoによるNDAの締結の拒絶がHuaweiフレームワークを準拠する意思のないこととみなされるかどうかについて判断を下さなかった。しかしながら、本裁判所は、実施者が適切なNDAの締結を拒絶した場合は原則としてこれをSEP保有者の申出の評価に関連して検討すべきとの、この点に関しデュッセルドルフ裁判所が示した見解に同意した [26]

さらに、本裁判所は、ドイツ民事訴訟手続法(Zivilprozessordnung, ZPO)第142条に従い管轄裁判所により発せられた文書提出命令を通じ、権利侵害訴訟手続において類似契約の使用を促す可能性についても検討した [23] 。このオプションは、特に、類似契約に定められた秘密保持条項により、裁判所命令が発せられた場合に限り契約の開示が認められる個別の事例において侵害を管轄する裁判所により検討される。本裁判所によれば、当該秘密保持条項は、それ自体では反トラスト法に反するものでないことから、特許保有者が訴訟手続において保護に値する秘密保持上の利益を確証できない場合を除き、尊重されるべきである [23] 。特許保有者が、秘密保持条項の拘束を受け、審理に際し類似契約書を提出する意思がある場合には、侵害を管轄する裁判所は、各案件の具体的な状況に基づき、ZPO第142条に従い文書提出命令を発する [23] 。特許保有者が当該命令に従わない場合、当該裁判所は、Huaweiフレームワークにおける両当事者の行為を全体的に評価する上で、その行動を不誠実さの顕れであると判断する場合がある [23] 。ZPO第142条に従い発せられた裁判所命令に基づき類似契約書の閲覧が認められた後、実施者が訴訟手続停止に同意しない場合も、同様に適用される [23]

実施者のカウンターオファー

本裁判所は、WikoがSisvelに対し、正当な過程でFRAND条件の対案(カウンターオファー)を行うHuawei義務を履行していなかったと認めた。各評価に関し、本裁判所は、2018年オファーに対するWikoの対応に注目した [27]

本裁判所は、申出がFRANDに該当するとみなしているか否かにかかわらず(通常はあてはまる)、実施者が具体的な事実に基づき、SEP保有者のライセンスオファーに対応する義務を負っていると明言した [23] 。さらに、実施者は、各事例の事実、特定分野での業界慣行及び誠実な原則を検討の上、可能な限り早急に対応しなければならない [7]

Wikoが3か月を超える期間、2018年オファーに一切対応しなかったことに鑑み、本裁判所は、Wikoが上記の義務に違反すると判示した [3] 。本裁判所の見解では、Wikoは時間の引き延ばし戦術をとったとされる [3] 。本裁判所は、フランスの休校期間や、(Wikoの陳述によれば)ライセンス関連業務を担当した従業員がわずか2名であったという事実が、Wikoによる対応の遅延の十分な根拠になるとは認めなかった [27] 。国際的な業務に携わる会社として、Wikoは、今後、各問題に対処できるよう十分な人材を確保すべきである [27]


C. その他の重要事項

差止命令並びに侵害性を有する製品の市場からの排除及び破棄を求めたSisvelの請求とは別に、本裁判所は、実体的事項に関するWikoの損害賠償責任を認め、宣言的判決を下した [28]

本裁判所は、Wikoが係争中の特許を著しく侵害したと判断した。とりわけ、Wikoは、少なくとも過失的行為をなした [28] 。Wikoは、極めて複雑な標準化技術(特に、規格に組み込まれる膨大な数の特許)が極めて複雑であるため、知的財産権に関する状況を評価することが困難になった(よって、過失を除外すべき)と主張した。しかしながら本裁判所は、基盤となる技術がより一層複雑になったために、実施者側に対するデューディリジェンス要件がさらに拡大したことを明言した [29]

  • [1] Sisvel対Wiko、マンハイム地方裁判所2019年9月4日、事件番号7 O 115/16。
  • [2] 同判決、17~31頁。
  • [3] 同判決、46頁。
  • [4] Huawei対ZTE、EU司法裁判所2015年7月16日判決、事件番号C-170/13。
  • [5] Sisvel対Wiko、マンハイム地方裁判所2019年9月4日、事件番号7 O 115/16、42頁。
  • [6] 同判決、43頁及び51頁以下。
  • [7] 同判決、42頁。
  • [8] Unwired Planet対Huawei、英国控訴院2018年10月23日判決、[2018] EWCA Civ 2344、第282節。
  • [9] Philips対Asus、ハーグ控訴裁判所2019年5月7日、事件番号200.221 .250/01。
  • [10] Sisvel対Wiko、マンハイム地方裁判所2019年9月4日、事件番号7 O 115/16、44頁。
  • [11] 同判決、44頁。
  • [12] 同判決、37頁。
  • [13] 同判決、47頁及び53頁。
  • [14] 同判決、38頁。
  • [15] 同判決、37頁。以下。
  • [16] Sisvel対Wiko、マンハイム地方裁判所2019年9月4日、事件番号7 O 115/16、39頁。
  • [17] 同判決、39頁。
  • [18] 同判決、40頁。
  • [19] 同判決、53頁。
  • [20] 同判決、54頁。
  • [21] 同判決、55頁。
  • [22] 同判決、40頁及び49頁。
  • [23] 同判決、41頁。
  • [24] 同判決、49頁。
  • [25] 同判決、50頁。
  • [26] 同判決、51頁。
  • [27] 同判決、47頁。
  • [28] 同判決、35頁。
  • [29] 同判決、35頁以下。